拝啓、あのときの、

拝啓

お久しぶりです。あのときはどうも。
全然変わらないですね。変わったねって言われた方が嬉しいこともありますけどね。
泣きたくなるほど変わってしまったことだって、きっと、いや絶対あるのにね。

流線型になびくカーブミラーに映った夕陽が綺麗だったなぁ、なんて、あなたの言ってること全然わかんないよ。わかりません。
わたしでもあなたでもない、第三者の目線が、氷のナイフみたいに突き刺さったまま抜けなくなってどのくらい経ったの?もういい加減溶けたっていいじゃない。びしょびしょになったあなたのままでいいじゃない。それなら涙を流したってわかりゃしないよ。

誰かが言ってた。
「青い春の次には、真っ赤な夏だぜ」って。
なるほど。
そしてその夏が終わったら、豊かに実った黄色い秋にコーヒーでも飲みながら笑って、ひそやかに沈む白い冬を少しだけ悲しいふりをしながら一緒に過ごしてね、そうして季節は一周してあなたと私の元に戻ってくる。取り返せるよ青春を。

なんてね、嘘だよ。嘘だったよ。
今はどうかな。さあ、どうなんだろう。君の気持ちはいつまでもわからない。

少しだけ、風の冷たい初夏の夜だ。

敬具

そんなんだけど、イノウエは。

つれづれなるままに!ひぐらし!

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