蜜柑が黄色くした僕の手で

蜜柑がごろり、と。

机の上には蜜柑が二つ、仲良さげに並んでいたりする。片方はテニスボールみたいにまるっとぼてっと座っているが、もう片方は太っちょの握りこぶしみたいに5枚に割かれた皮が頂点を目指して喧嘩をしている。中身は空っぽだ。

うーん、違う。だめだ。喩えも書けない。下手くそ。
ここのところ、何にも書けなくて困っている。前までは2分考えれば「これ書けそう」っていうのを思いつけていたのに、「書けそう」に至る前にそれを自分の中で打ち消してしまうみたいだ。

「比喩下手くそかよ」
「こんな稚拙な思考してんのウケる」
「何が伝えたかったのかわからないし時間の無駄だったな」etc

当然、そんなこと面と向かって言ってくる友人は周りにいない。いないけど、いるような感覚に襲われて、書けそうな題材を見つけても思考が停止してしまう。

どうしてそうなったのか。わかっては、いる。でも原因をここに書いたって治るわけでもないし言い訳みたいになるから書かない。ただ、目の前のことに一生懸命立ち向かってそれに打ち勝てば、一つ前に進めるのだと思う。

村山由佳さんの『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズに登場する原田先輩が言っていた。

「言っとくがなぁ。『スランプ』なんて言葉を使っても許されンのは、ほんのひとにぎりの一流選手だけだぞ」
「まだどれをとっても未熟なお前らごときが落ちこむ穴ぼこなんぞ、単なる練習不足か、せいぜい伸び悩みでしかねえだろうが。ったく、甘ったれたこと言ってんじゃねえ。聞いてるだけでこっぱずかしいぞ」


『夢のあとさき』(おいしいコーヒーのいれ方X)

そう、ただの練習不足、伸び悩み。
伸びた結果がどうなるかなんてわからない。わからないけど、伸びるに越したことはないんじゃないかと思う。
存在しない敵を自分の中に作って勝手に怖がってるだけなので縮こまってる思考の肩の力を抜いてあげたいですね。肩揉んであげるよ。手、黄色いけどいいかな。いいよね。

うん、頑張るな、自分。

そんなんだけど、イノウエは。

つれづれなるままに!ひぐらし!

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