シュウカツ死すともイノウエ死せず【自己満・就活総括⑤】(最終回)
「生きていてよかった、そんな夜を探している」
最終面接の前夜、そんな歌を歌った。
夢の中で暮らしている
夢の中で生きていく
心の中の漂流者
明日はどこにある?
明日、就活が終わる。
【6日前】
D社の二次面接を受け家に帰りついた僕は、自室のベッドでうつぶせになって息を止めていた。いっそ意識を飛ばしてしまいたかった。まぎれもない現実逃避だ。僕を取り囲む全部から逃げたかった。
スマホが振動している。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。時刻は18時前。夕陽のオレンジで外が染まっているだろうことがなんとなくわかる。スマホを手に取ると、知らない番号からの着信だった。近頃はリ○ナビやマイ○ビがおせっかいな電話をかけてきたり、民間の留学センターが営業をしかけてきたりするから電話に出るのが億劫で、あえて取り逃がした。
そのままスマホで番号を検索にかける。
「あなたのいるところに行きますので、これからちょっとお会いできませんか?」
D社が僕に好感をもって、かけてきてくれた電話だった。しかしその会社と僕の家は1時間半ほどかかる距離にある。これから、と言って会うには多少遠い。
先方が今週は出張ということで、次の週に会うことになったが、それはKB社の最終面接と同じ日だった。人生isタイミングである。
そう、人生isタイミングなのだ。「もしあの時…」を繰り返しても意味はないが、そう思わずにはいられないタイミングの妙というものはある。
その日から1週間、悩みに悩んだ。獲らぬ狸の皮算用ではあるが、考えることは決して無駄ではないはずだった。
自分のやりたい仕事、夢、社会人になる不安、仕事の幅、働いている人の雰囲気、名誉、知名度、年収……
たくさんのファクターがあった。
何を重要視するか。何を捨てて、何を得るか。その選択だった。
冒頭に戻る。
生きた心地のしない1週間を生き、「生きててよかったそんな夜を探してる」と歌った。
ま、とりあえずKB社の内定かっさらってくか!と最後には開き直って眠りにつく。
全滅だろうがなんだろうが、就活はひとまず終わるのだ。
KB社の面接は結構の癖のあるものだ。それはここに至るまでの面接で実感していた。
Q.あなたが社会に出たら貢献できると思うポイント3つを教えてください
Q.心がふるえた最近の出来事、ベスト3から順におっしゃってください
Q.会社帰りのデート、女性にしてほしいファッションはどのようなものですか?
Q.あなたがモテるためにしていることはなんですか?そもそも、モテるほうですか?
――これらは実際にされた難しい質問の一例である。
結論から言えば、最終面接も癖だらけだった。
ESに書いた「最近怒ったエピソード」について、社長さんに深堀りされる。
「じゃあ、私がこの怒られてる人だと思って、実際に説教してください」
なんというか、癖がすごい。
語尾をぼかしながら、社長さんを説教する羽目になった。
「~~だから、そういう態度は、改めたほうがいいと思う……ますよ」
こんな具合に。
正直この印象が強すぎてほかの質問はよく覚えていない。
ただ、一つ嘘をついた。
「D社から内定が出て、うちも内定をお出しすることになったらどちらを選びますか?」
即答で、御社です、と答える。即答するほど、まだ僕の心は固まっちゃいなかったのに。
それでも、五分五分だと思った。他にいい人がいなければ内定出るかもな、それくらいの感覚だ。
KB社の面接終了後、D社の社員さんに会うべく、待ち合わせ場所に向かった。
タイミング悪く、電車が運行を見合わせている。中々電車はやってこず、たった一駅なのに動けない。待ち合わせまであと10分に迫った時、僕は走り出した。
人をかき分け、わき腹を痛めながら走る。冷や汗なんだか、暑さによる汗なのか判別がつかない。ワイシャツもびしょ濡れだった。
…………
まあここから先は過程を描写するときりがないので、詳しくは書かない。
この就職活動の最後の最後の結果だけ書いておく。あくまで自分の見栄のために。そんな結果なんてどうでもいいかもしれないけど、ここまで読んでくれている人なら興味あるかもしれないなとも思うので。
(以下時系列順)
児童書出版P社:ES落ち
電子書籍B社:一次面接落ち
教科書出版M社:一次面接落ち
出版取次N社:二次選考落ち
出版社B:二次面接落ち
出版社SY:一次面接落ち
出版社KD:二次面接落ち
出版社S:最終面接落ち
出版社A:二次面接落ち
出版社KB:内々定
絵本出版社D:内定(入社)
なんだ、結局何とかなってんじゃん、と思うかもしれない。
というか、自分自身でもそう思ってる。
でも、初めて内定もらったのは7月の中旬だし、そこまでの3か月くらいは失望と絶望を繰り返していた。周りの状況と自分の選考状況を見比べては一喜一憂する毎日。
いや、一喜一憂なんてものじゃない。「一喜十憂」くらいだ。社会にで出ようとするのがこんなに大変だとは思わなかった。
偉そうに就活を語っていたあの先輩にはなりたくないから、自分から積極的に就活の話はしないけど、相談なら乗るので不安な気持ちになったら連絡ください。死にたくなるほど惨めな気持ちはわかるつもりでいるので。独りぼっちで思い悩んでいるのが一番きついし、同期には相談しづらいこともあると思うし。気が向いたらでいいです。
綱渡りみたいな就活をしてしまった自分が悪いのだけど、そんなグラグラ揺れている中でも気を遣ってか敢えて普通に接してくれた友人たち、綱から落ちそうになった時に励まし、落ち着かせてくれた家族……ここには書けないけど、たくさんの人に感謝を捧げたいです。
そして、こんな自己満総括を読んでくれたあなたにも感謝しています。
本当にありがとうございました。
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