抱き間違え

いつもいつも、気づけば間違えている。

そいつにスッと手を添えて、慌てて次の段階に進もうとして ーー間違いに気づく。
「危なさ」に似たソレに添えられた左手は戸惑いながら宙に浮く。

間違うことが癖になってしまって、その間違いに気づかないことも、ある。悪い男だ。

だからできれば抱きたくない。
抱かずに済む方法も模索するが、結局抱いてしまう。
抱かざるを得ない状況もあるから、こればっかりは仕方がない。

最初に抱き間違えたのはいつだったのだろう。そしていつになったらちゃんと抱けるようになるのだろう。
初めて母の手を握って歩いた時のことも、最後に握った時のことも思い出せないから、きっとそういうものなのだと思う。
そうだ。気づかぬうちに最後になってしまったことが、たくさんある。僕たちはその最後の一瞬に何の想いも馳せずに果てていくだけだ。

もしかしたら、この先、一生抱くことはないかもしれない。間違えることもなくなるかもしれない。
それでも、間違えたまま一生を終えたくない。
正しく抱いて、悔いなく果てたいのだ。
間違えないためには、正しく抱き続けるしかない。小学生の漢字ドリルさながらーー
いや、そのもののように、だ。


いつもいつも、気づけば間違えている。

……………………
プレイボーイな話だと思った方、残念。
すっかり癖のついてしまった誤字の話です。
勘違いしたそこのあなたはもう一回読みましょう。

そんなんだけど、イノウエは。

つれづれなるままに!ひぐらし!

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