私の日
また、撫でられた。
何度撫でたって同じよ。それよりおやつを頂戴。
あなたが笑顔でわたしの名前を呼んでたら、少しの間をおいて、それからかけ寄るわ。迷ったふりする私のちょっとした意地。プライドね。
抱き寄せて、そして手を握ろうとするあなたは嫌い。嫌いよ。手を握られるのは好きじゃないの。しつこいあなたは嫌いなの。
あなた、たまに言うわね。「夜の方が可愛い」なんて。そんなことありえないわ。眼を細める朝だって、正真正銘、わたしなの。比べちゃいやよ。わたしはいつだって可愛いはずよ。
わたしに顔を埋めて幸せそうな顔をするあなたは憎めないけど、10秒だけよ。10秒だけあなたにあげる。その間だけ、わたしを好きにして。
わたしの脇を通りすがったあなたをちらっと見やりながら今日はもう眠るわ。たまにはあなたのいない夢を見たいわね。
あなたに出会った日のことはよく覚えてる。
冬、曇り空の日。さびれた公園の片隅。あなたは困った顔で私のいる箱を覗き込んだ。私は、にゃあと鳴いてあなたに助けを求めたの。なりふりなんて構ってられなかったあの頃、誇りなんてなかった。とにかく温もりが欲しかったの。私を見つけたのがあなたでよかったわ。そんなこと言ってあげないけどね。
毎日がわたしの日。このおうちの全てがわたしのもの。もうお外のことはわからないけれど、疲れた顔して帰ってくるあなたを見ればわかる。きっと大変なヨノナカなのね。
でもそんなことは関係ないわ。
今日もわたしの日。きまぐれに生きてくわたしを許してね。
愛して。離さないで。わたしを、ずっと。
また、撫でられた。
0コメント