夏の終わりに抗ってさ

夏が過ぎてく。左側の車窓には夏が広がっていて、そいつは後ろに流れるように通り過ぎていく。キリンジを聴きながら北の大地を眺めていると自分が何かのドラマの主人公になっている気さえする。視聴率0パーセントの、くだらないドラマ。

あの子はどうしているだろう。何をしているのだろう。何を見て、何を感じているのだろう。味のしなくなったガムを一噛みするように、時折僕のことを思い出してくれればいい。
そんな主人公みたいなことを考えても、何だか許される気がした。


やたらに低い雲が鮮明に、繊細に浮遊し分解されていく。雲が小さな水滴の塊なのだと僕はようやく納得する。
高い建物がないから地平線の奥の山々までずっと見通せる。水彩画みたいな青空と雲の連続は神秘的なほど陽射しを吸収して、交わり、一体となっている。

束の間、電車はトンネルに入った。
暗くなった車窓に自分の顔が映る。視聴率0パーセントドラマの主人公は、こんな眼をしてそんなことを考えていたのか。無性に恥ずかしくなって、ぷいと目を逸らした。

そんなんだけど、イノウエは。

つれづれなるままに!ひぐらし!

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