スクェアな自分にハローグッバイ【イノウエ旅行記一日目】

赤羽で買った小説は、仙台で読み終えた。あたりを見回すと郡山から一緒だった乗客は既にいない。高校生の男女が騒がしく乗車してきては降りていく。俺は一人、右へ流れていく景色の一点を見つめるだけだ。

旅、というには大袈裟だろうか。しかし"旅行"というにはいささか計画性のない放浪である。とにかくそんな放浪が今日から始まった。

俺はそこそこに保守的な人間だ。
自宅から駅までの道のりは毎日全く同じコースで歩く。カラオケでもカラ館かカラ鉄くらいにしか行かない。好きな飯屋は固定され、そして満足する。
それはそれで平和だ。自分の中の正解が分かっているから何も失望することがない。そんな可もなく不可もなくな生活が永遠に続けばいい、とすら思うくらいだ。

しかし、何だか悔しい。
井の中の蛙も大海の存在くらいは知ってしまっているのだ。そしてその空の青さは飛び出す前から知っている。
だから決めた。北海道にいこう。スクェアな自分にハローグッバイ、したい。
そしてどうせなら学生生活という"青春"に「青春18きっぷ」を使う。ありふれているだろう。特別なことではない。それでもイノウエという蛙にとってそれはかなり特別なことなのだ。


5日間。あるのは「青春18きっぷ」と一つのリュックサック、そして臆病な俺と、ひとかけらの勇気。

今日はマクドナルドで夜を明かすとするが、あと4日間は如何としよう。
そのくらいの気ままさで、今は東北本線に揺られている。

そんなんだけど、イノウエは。

つれづれなるままに!ひぐらし!

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