生きてさえいればいいの。
「生きてさえいればいいの」
声を詰まらせて、母は言った。
「あなたが部屋で寝ているのを見てどれだけ安心したか…どこかで死んじゃうんじゃないかって…ほんとに…」
ここ3日、自分自身、死にたくて、でもそんな勇気もないから、死ななかった。
友達と会って無理に笑うことで情けなさや悔しさ、不甲斐なさを打ち消そうとした。それでも奥底には弱い自分がいて、そいつは弱い方へ弱い方へ自分自身を引きずり込んでいく。偶発的に死んじゃえばいい。電車が脱線して死ねばいい。飲酒運転したやつの車に轢かれて死ねばいい。でっかい地震で為すすべもなく死んじゃえばいい。不謹慎なのはわかってる。でも、仕方ないよね、で済まされる死に方で死ねばいい。自分なんて死んじゃえばいい。そう、思ってた。
生きてさえ、いればいい。母からのそんな根本的な承認を受けて、自然と顔が歪んで、そんな自分にも驚いて、それでも小さな嗚咽と滑らかな涙を食い止めることはできなかった。
そうか、生きてていいんだ。そう心から思えたのはいつぶりだろう。
これは俺だけの人生じゃないんだと気づいて、死んじゃえばいいなんて思った自分にさらなる情けなさを上塗りした。
母に対して申し訳なく思ってる俺の心さえ、母はわかっていて、それに対して涙を流す母に申し訳なく思う。不甲斐ない息子でごめん。この言葉すら母は許してくれるだろう。それも、両手を広げて。
「悩むなら、なってから悩め」って某漫画の登場人物は言ったけど、本当にその通りで、まだ完全に負けたわけじゃないんだと。まだ、勝つルートはある、と。そもそも勝ち負けなんてなくて思わぬところに自分の活きる道があるんだと、気づかされた。
とりあえず、もうちょっと頑張ってみるよ。その時に出た良い結果を肴に、また飲めればな。
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