リセットおばさん
ぽっかりと空席がある。その電車内には立ってる人も多くいて、そこに座らないのが不思議なくらいであった。
乗り込んだ僕はこの席を見て、何だか嫌な予感を覚える。前に座ってた人が相当汚れている人だったのかなとか、隣のどちらかの人の体臭がすごいのかなとか。
不思議なものだ。誰も座ろうとしないことが逆にその席の危険な香りを掻き立てていく。
そこに、どかっと腰を下ろした人がいた。
おばさんだ。横に広いタイプの。特売品を容赦なく体を張って奪い取るタイプの。
こういうのは大体おばさん。大抵が、おばさん。
しかしこのおばさんによってその座席の「汚れ」はリセットされる。「座れる」ということが証明されたことで次の人はなんの疑いもなくその座席に腰を下ろしていく。
いつもありがとう、おばさん。
「汚れ」をリセットしてくれてありがとう、おばさん。
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