せんせい①
大学の卒業論文では、小説を書くことになっている。
心酔している「せんせい」の下で。
それについてちょこっと記しておきたい。
2年生のある日、通っているキャンパスに有名な現役作家が客員教授としてやってくることを知った。
ときめいた。ずうっとファンだったから。
小学生の頃からずうっと。
3年生の春、「ライターという仕事」という演習科目を申請し、履修が決まった。その時は心底嬉しかった。帰りぎわ、川沿いの道を走り出しちゃうくらいに。
せんせいの講義は、今まで受けたどの講義よりも刺激的で、面白かった。
「面白い」という使い古した言葉では表現できないくらい、たくさんのことを学んだ。
この体験は最早「興奮」と言い換えてもいい。視点の持ち方や自由な発想、特に時事的な問題をどう捉えるかなど、ノンフィクションライターとしてのせんせいの教えは爆発的に、染みた。(期末レポートの期限を間違えて単位落としかけたのは内緒)
3年生の秋には「ライターという仕事」と、新たに「小説表現」を申請した。
どちらも履修が決まったときは、実家の階段を駆け下りては駆け上ってを繰り返したくなるくらい嬉しかった。
「小説表現」はせんせいの得意分野だ。いや、得意分野とかそういう次元ではない。せんせいはその分野のスペシャリストで、テンサイで、サイキョーで、サイコーの人なのだ。
小学生の時、授業で一度だけ、物語を書かされたことがある。写真を見て想像して書け、という単純なものだ。今でも冊子が手元にあるが、恥ずかしくて開けない。
その時以来の物語創作を行うとあって、気恥ずかしさと不安とプライドが混ざり合ってよくわからない感情になりながらキーボードを叩いた。
(続く)
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