「させていただきます」

敬語は、難しい。
ある日テレビで、女性アイドルが小太りの女芸人にこう言っているのを見た。
「大ファンです!尊敬させていただいてます!」
何だろう、この背中が痒い感じ。
「尊敬させていただいてます」
??
とてつもない違和感だ。

「させていただく」という言葉は、(個人的な認識ではあるが)「許可」のニュアンスがあるように思う。相手の「許し」なくして「させていただく」ことはないと言っても過言ではない。
だから「尊敬」という一方的な感情に仰々しく「させていただく」をつけることにミスマッチを感じるのだろう。

二重敬語、というものもある。
「いつも拝読いたしております」
この文も「拝読」「いたす」と2つの謙譲語を使ってしまっており、アウトだ。敬語警察にしょっぴかれる。
言うまでもないが、「拝読させていただきます」もアウトだ。懲役2年または、10万円以下の罰金。

丁寧に、丁寧に。失礼にならないように。
そう気をつければ気をつけるほど、相手を「尊敬」しすぎたり、自分を「謙譲」したりしすぎてしまう。二重敬語の難しさはそこにある。

この一件も敬語の難しさを物語る。
父の部下から父へのメールだ。文末にこうあった。
『お目にかかれますのを楽しみに致しております。』
ガラケーの画面を睨みつけながらため息をついた父は言った。
「楽しみにするのは上司側なんだよなぁ」

そう。この『お目にかかれますのを〜』の文は決して間違っていない。むしろ正しい敬語だ。敬語警察のお巡りさんも笑顔で挨拶してくれるに違いない。

しかし、受取り手側の認識によっては「楽しみにする」という表現によってマイナスイメージが生まれてしまう可能性もあるのだ。コミュニケーションにおいては受取り手側の認識が全てだ。そう、上司と会うのを安易に楽しみにしてはいけない。


日本に生まれ育って21年。これでもかと詰め込まれた日本語の中でもトップレベルに難しいのが敬語だった。いままでも苦戦してきたが、これからはもっと敬語に出会う機会が増えるだろう。その時はよろしく。
あ、違う。

敬語さま、宜しくお願い申し上げます。


そんなんだけど、イノウエは。

つれづれなるままに!ひぐらし!

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