かれのもとへ、歩いてけ。【イノウエ旅行記三日目②】
住所だけを頼りに、友人の住むアパートを探す。札幌駅から歩くこと50分。遂に彼の住むアパートを発見した。会えれば4年ぶりだ。会えれば。
その男は中学受験期の頃の戦友だ。北海道の大学に通う彼は一昨年、自らの住むアパートから年賀状をくれた。「LINE教えて」とあった。
しかしその年、俺は喪中で、あれよあれよという間に返事を書きそびれてしまった。これに関しては俺が悪い。
さらに次の年、彼はまた年賀状をくれた。
案の定、こうあった。「LINE教えて」
普通は自分のIDを書いた上でそう言うだろう、と苦笑しながら、それでも申し訳なさも添えて今度はしっかり返事を書く。もちろんLINEのIDも添えた。
しかし、LINEは一向に来なかった。
シャイな男なのだ。昔から。
札幌駅から歩き出してから25分。またしても北海道のスケールに驚かされる。都会に見える札幌でさえ、ストライドが違うような気がする。一歩の感覚が遠い。
冒頭にもどる。
アパートだと思っていた建物は、寮だった。玄関のインターフォンを押すと40代の女性が現れた。顔には誰だこの人、と書いてある。
「201号室の、◯◯くんを訪ねて参りました。今こちらにいますかね…?」
「あぁ…◯◯くんなら3月に退居されています」
「え…」(ぽへ〜〜〜)
どうやら簡単には出会わせてくれないらしい。
来年の彼の年賀状に書かれた住所に、俺は歩いていけるだろうか。歩いていく意志だけでも、絶やさないでいたいと思う。
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