海岸線をとろとろと【イノウエ旅行記二日目】
一睡もすることなく空が白みを帯びる。時刻は早朝5:00。俺の1日は岩手県北上市のマクドナルドから始まった。北上駅から徒歩30分。朝のいい散歩である。
盛岡〜青森の区間はいわゆる第三セクターというらしい。簡単に言えばその区間は青春18きっぷを使用できない。やたら運賃の高い私鉄(?)の2両編成に乗り込んで、俺は眠った。
すいていたからボックス席に座ったのだが、それが運の尽きだったのだろうか。目を覚ますとおばさま方3人に囲まれていた。よくよく聞くと各々自分の話しかしていない。それでも俺の住む街とかなり近い場所に住んでいるようで散々話に加わろうか悩んだが、結局やめた。どうせ興味もない話を聞かされるだけだ。それでも俺は優しそうな顔をして、流れる景色の一点を眺めていた。
無事、第三セクターを越えた。そして向かうは最後の関門、本州最北端の津軽海峡である。奥津軽いまべつの道の駅で昼食をとった。漬けマグロ丼だった。
売店を覗く。遠目では若い美人の店員がいるな、と思って「歯磨き粉は置いてますか?」と話しかけるついでに顔を見る。
意外と若くなかった。歯磨き粉もなかった。
北海道上陸後は無邪気な観光客を一人で演じていた。五稜郭駅から五稜郭を目指して歩いたら30分もかかった。どうやらそれが北海道のスケールらしい。
五稜郭駅からJR函館本線でまた電車に揺られる。高校生がやたら大勢いて、何だかこちらが萎縮してしまう。電車を待つ彼らには彼らなりのルールがあって、俺はそれを破ってしまっているんじゃないかと心配すら覚える。多分、杞憂だ。
3時間近く、流れる景色を見つめただろうか。現在、俺は長万部(おしゃまんべ)という駅にいる。
そこから二駅歩いたところに「日本屈指の秘境駅」があり、歩けば4時間ほどで着くらしい。とてつもなく行ってみたいのだが、その駅は長万部を出る5:30の始発電車が無情にも通過してしまうため、札幌到着がかえって遅くなってしまうことがわかって、やめた。
秘境よりも充電が欲しい。この文章を推敲する時間すら、惜しい。
でもまあ一駅は歩くよ。海岸線をとろとろと。
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