自覚と金髪と理由

自覚しているのに自覚したまんまで終わる自分が嫌で、髪を染めた。原因と結果をストレートに結びつけるのはナンセンス。いかんせん、僕は感情的で突発的な人間だから、原因と結果を結びつけた理由なんて分からなかった。

自分で髪を染めるのは初めてで、どうにもムラができてしまうのだけど自分程度にはそれくらいでちょうどいいのかもしれないと割り切った。薄汚れた金色を下手なペンキ職人に塗られたような後頭部は、僕の自覚できていない何かを教えてくれているようだ。

「何その色」
翌日、大学の食堂で会った遥香はそう言って顔をしかめた。ありのままの僕を受けとめてくれていた遥香はこの髪色が気に入らなかったようだ。
「染めたんだ。気分で」僕はこめかみを軽く掻いて目を伏せた。
「それはわかるよ。でも、似合って…ない」
言いづらそうに語尾を細めて遥香は言った。
「それは問題じゃないんだ」
「そうなの?」
「そうなんだ」
「…じゃあ、どうして染めちゃったの?」
「さっきも言ったよ。気分、だ」
彼女は考え込むようにして目を閉じた。何につけても理屈っぽい遥香は僕が染髪した理由なんてきっと分からないだろう。伸びきったラーメンをすする。遥香はサンドイッチをテーブルに出したまま、手をつけていなかった。そういえば人肉を喰らう怪物が出てくる漫画でその怪物が人間のふりをして食べていたのがサンドイッチだったな、と思い出す。僕たちは分かり合えないのだろうか。

それなりに色々自覚するところはある。自分の良いところも悪いところもそれなりに、わかっているはずだ。マーブル模様みたいになったこの髪色みたいに、それらは至る行動に溶けていて時々表出する。
物事の結果に原因はあっても理由なんてないことが多いのかもしれない。
この汚い金髪も何かの原因になることはあっても、何かの理由になることは少ないんじゃないか、と僕は踏んでいる。


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はい、適当に書き出したら締め方がわかりません。アホです。ちなみにこれは創作なので実際のイノウエは髪を染めてません。染めるとしても金色にはしません。恐らく似合わないので。

そんなんだけど、イノウエは。

つれづれなるままに!ひぐらし!

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