「一般」ってなんだ


「一般」ってなんだ。

某社の筆記試験会場、「一般常識問題」を目の前にして頭をかきむしっているとそんな疑問が脳内でこだました。
シャープペンシルの音が一気に遠のく。

Q.現在のアメリカ合衆国大統領は?
A.ドナルド・トランプ

はい、「一般」常識。

Q.コーラルピンク、フューシャピンク、ペールピンクの3つのピンクを薄い順に並び替えなさい。
A.…指図すんなや。(知りません。)

「一般」?常識である。

まあもちろん、ファッション関係に明るいタイプの女子なら正解できる可能性はあるだろう。その界隈を「一般」と定義すれば「一般常識問題」であるのは間違いではない。

私の志望業界は大抵の場合、筆記試験がえぐいほど難しいのだけれど、中でも「一般常識問題」と題される科目は「非常識問題」と言っても過言ではない。出題ジャンルは半端ないほど広いし、たまに出題そのものが深すぎて何言ってるのかさえわからないことがある。
(もちろん、簡単な「一般常識」もあるからそれらを取れれば案外なんとかなるのだけど)

そのため平均点は、ある情報筋によれば5割台であったりするらしい。どこが「一般常識」なのか。


さて、「一般」といえば、共謀罪においてもこの「一般」の範囲について揉めていた。
一体「一般」が指すものはなんなのだろう。
(余談だが、私はある作文テストで「共謀罪」を「共媒罪」と書き間違えてしまって、まんまと落とされた。)

紛れもなく、私は「一般市民」だ。
「一般市民」というのは、自虐的に言えば、無名で、羽虫みたいに小さく、大量に飛散する顔のない集団だ。その生き様は世間的には全くもって関心のない事項で、生まれながらにして「生まれていない」ような存在と言っていい。

テレビに出ている有名人はどうだろう。週刊誌に不倫を取り沙汰され、「一般市民」に向かって訳もなく謝罪する有名人たちは私たち「一般市民」と明らかに一線を画している。なぜなら私たち「一般市民」が不倫したところで「一般」に向かって謝ることはないからだ。(当たり前だ)

何をしたら「一般」ではなくなるのか。
自分にとっての「一般常識」は他人にとっての「一般常識」なのだろうか。
それは多分違う。前提としてもっている知識レベルのハードルを相当下げれば、そこに「一般常識」が発生するとは思う。
しかし、生きてきた環境とか読んできた本とか、経験した出来事やそれに対する感じ方が違う限り、私たちは「一般」を背負った羽虫なんかじゃないと思いたい。顔のない集団として括られたくない。「一般市民」にもプライドはあるのだ。

………
シャープペンシルの小さな連打音がボリュームメモリを上げた時のようにゆっくりと戻ってくる。
目の前のお洒落な私服のショートヘアガールは例のピンク色の答えを知っていたのだろうか。彼女はいわゆる「一般」なのだろうか。


「一般」ってなんだ。
ますますわからなくなった。


そんなんだけど、イノウエは。

つれづれなるままに!ひぐらし!

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